5月の終わりに、島根→広島旅行へ出かけてきました。
中国地方って今まで行ったことがないこともあって「行きたいところを巡ろう!」という旅行でしたが、いろいろな場所をリストアップして繋げてみたところ、羽田から米子まで飛行機で飛び、そこから松江・出雲観光→広島に移動して宮島、呉観光→広島から羽田へ戻るという、かなりハードな行程となりました…。
出雲大社と厳島神社という、日本を代表する神社を巡るツアーになった訳ですが、今回の旅行のもう一つの目的は、呉基地観光と大和ミュージアム、てつのくじら館の見学です。
1/700の模型を作り始めてそろそろ1年になりそうですが、いつか大和を作る上で、1/10の模型はぜひとも見ておきたいところ。
というわけで、広島に行くなら呉まで足を伸ばしちゃえー!ってことで、呉まで行って参りました。
今回の呉観光で巡っておきたいポイントは大和ミュージアムと隣にあるてつのくじら館なのですが、日曜には呉基地で護衛艦の一般公開を毎週行っていますので、せっかくなので護衛艦も見学することに。 17時の高速バスで広島空港に向かわないといけないため、駆け足での呉観光でしたが、とても堪能することができました。
呉地方隊で行われる艦船一般公開は、日曜日の10時、13時、15時の3回にわけて行われます。
今回は他にも巡るところがたくさんあったため、初回の10時にあわせて突撃した後、大和ミュージアムとてつのくじら館に行くルートに決定。
宿泊した広島から呉までは電車で50分程度ですので、9時40分の受付到着時間から逆算、8時過ぎに出発することにしました。
呉駅前から呉基地の入り口がある昭和埠頭前のバス停を降りると、そこには数々の護衛艦が! 否応なしにテンションが高まります。
流石は呉!といった感じです。
手前に見えているのは掃海艇「まきしま」、その奥が今回一般公開されていた輸送艦「しもきた」、さらに奥に見えている、空母のような形をした艦はヘリコプター搭載護衛艦「いせ」となります。
少しぼけてしまっていますが…受付に向かう途中の、向こう側の埠頭には敷設艦ARC-483「むろと」とおやしお型潜水艦と思われる艦が係留されていました。
おやしお型潜水艦のシュノーケルマストって、途中から形状って変わっているんでしょうか。
この艦は、そうりゅう型っぽい感じに成形されたマストを装備していました。
こちらは艦橋部分のズーム写真。
潜舵の上にある扉ですが、水密扉としてはめちゃ薄いですが、これは艦橋部分は水密区画になっておらず、潜水時には水没するためと思われます。
潜水艦は内閣部分が水密区画になっており、それ以外の部分は海水が満ちることで水圧から保護される仕組みになっています。
潜水艦救難艦ASR-403「ちはや」。
艦の中央に潜水救難装置であるDSRVを装備した、独特のシルエットが特徴的です。
ちなみに、似た艦として艦これで人気(?)の“ちよちよ”こと「ちよだ」の名を受け継いだAS-405ちよだも存在しますが、こちらは潜水艦救難母艦なのに対し、「ちはや」は医療設備および潜水救難装置の強化により母艦機能が排除されたため、艦種から「母艦」が省かれた形となっています。
集合場所のすぐ脇には、あぶくま型護衛艦のDE-229「あぶくま」とDE-232「せんだい」が仲良く並んでおりました。
こちらも旧海軍の名前を受け継いだ艦で、艦これではそれぞれ5500トン型軽巡洋艦として実装されていますね。
現在のあぶくま型は、基準2,000tと小型の艦船ですが、アスロック対潜ミサイルとハープーン艦対艦ミサイルを備えた強力な艦となっています。
遠方にはむらさめ型護衛艦のDD-106「さみだれ」と発展型のたかなみ型DD-113「さざなみ」が係留中でした。
こちらも上のあぶくま型同様に旧海軍時代の名前を引き継いだ艦で、艦これでも実装されているおなじみの艦となります。
ドジっ娘と「ご主人様、調子に乗ると、ぶっとばしますよ♪」といった感じの変わり者コンビですな(違
さみだれ・いなづまの奥には、練習艦しらゆきが係留中。
はつゆき型護衛艦の2番艦で、現役を退いてからは訓練艦として活躍しています。
その隣に見える巨大な艦は、ひゅうが型護衛艦2番艦、いせ。
デカいですね… 1週間前はこちらのいせが公開されていたんですよね…残念。
反対側の埠頭には、うらが型掃海母艦MST-464「ぶんご」と、奥に見えるのは訓練支援艦ATS-4203「てんりゅう」とATS-4202「くろべ」がいました。
そういえば、くろべは横須賀カレーグランプリの際にも出店(?)していたような。
てんりゅうのほうは、言わずと知れた巡洋艦「天龍」の名前を引き継ぐ艦であります。
ぶんごは、掃海母艦としての役割のほかに、機雷敷設艦機能を併せ持つ、いわば機雷戦母艦としての役割を担う艦です。
満載時で6,900tと、かなり大きい艦となっております。
ヘリコプター搭載護衛艦、DDH-182「いせ」。
満載時排水量19,000tと、満載時27,000tを誇るいずもが搭乗する前までは最大の艦だっただけあり、望遠レンズ越しでもその存在感は半端ないです。
外見からするとヘリ空母、またはVTOL機搭載の軽空母といった感じですが、分類状はヘリコプター搭載護衛艦であり、16セルのMk.41 mod.22 VLSを備えるなど、強力な打撃力を備えた艦となっています。
従来の護衛艦の能力の延長線上に、ヘリ運用に特化した艦って感じでしょうか。
さて、こちらが今回公開されていたおおすみ型輸送艦2番艦、LST-4002「しもきた」。
輸送艦といっても、満載時で13,000tと「いせ」ほどではありませんが、それでもかなりの排水量を誇ります。
自衛隊の護衛艦としては初の全通甲板を持ち、ひゅうが型の設計の基礎となった艦でもあります。
いわゆるドック型揚陸艦であり、全通甲板と艦内に搭載するエアクッション型揚陸艇 (LCAC)2隻を利用することで、短時間に大量の物資を揚陸することが可能です。
搭載しているLCACですが、約70tの積載能力があり、90式戦車などもそのまま載せることが可能で、かなりデカい艦です。
ウェルドック部分も見学できたのですが、最初はデカすぎてそれがLCACだと気づくまでちょっと時間がかかりました。
さっそく、タラップを上って艦内へ入ることとします。
※写真ですが、後続の方の迷惑&撮影出来ない箇所などもあり、内部の写真はあまり撮影出来ておりませんのでご了承をば。
艦内に入ると、すぐ目の前は食堂でした。 大きい艦だけあって、食堂もかなりの広さです。
食堂に掲げられていた、「不撓不屈」(ふとうふくつ)の額。
意味は「強い意志をもって、どんな苦労や困難にもくじけないさま」となります。
対義語は「戦意喪失」だそうで…そりゃアカンですな。
食堂を出て細い通路を進むと、黒一色で着色されたスペースに出ました。
後ろから光が差し込んでいるので、ここがウェルドックに違いない!ということで中を覗くと…なにやらファンのようなものが。
中央が通路のような構造になっています。
かなり幅が広いので、ここがウェルドックの中かなーと思っていたら、よくよく見ると左右の構造物、これってLCACのものじゃないですか!
ってことは、この部分がLCAC荷物・車両の積載部分で、LCACの全体はこの写真に収まらないくらい巨大だったりします。
というか、ウェルドックの幅ギリギリなんですね…
LCACの推進力を生む巨大なファン。
人が吸い込まれたら一瞬で粉砕されるくらいのパワーがありそうですので、間違って吸い込まないように?防護用のネットが取り付けられております。
ウェルデッキに格納されたLCACを横目で眺めつつ、艦尾にあるラッタルを上るとそこは甲板でした。
さすが全通甲板だけあって、めっちゃ広い!
揚陸艦なので空母と異なり、かなりブリッジが横方向にも巨大なのがわかります。
しもきた艦上より、呉造船所方面を眺めてみました。
大型クレーンの向こうに見える、巨大な屋根の付いた建物が、戦艦大和を作ったドックです。
当時は極秘で建造されていたため、巨大な屋根をつけて艦全体を覆って建造していたのですが、当時の骨組みがまだ1/3ほど残っていて、今でも使われています。
外板は新しいものに張り替えたらしいですが、骨格部分は今でも当時のものを使っているとか。
後ろ側から見上げた、しもきたの艦橋。
巨大なクレーンがそびえています。
手前にあるカバーを被っているのは、ファランクス20mm CIWS。
左側の赤い砲のようなものは消火用の放水器です。
艦橋の左上に、ヘリコプター誘導灯が確認出来ます。
甲板には+字の切り込みが多数ありますが、このようにチェーンを引っかけて、荷物を固定するために使用します。
けっこう穴が大きいので、夜間とかだと足を取られて転けることとかありそうな気がします…。
前方から見たしもきたの艦橋。
前方にもファランクスが備え付けられています。
輸送艦ということもあり、自衛のための最低限の防御兵器しか有していません。
艦首部分の、アンカーチェーンの巻き上げ部分。
甲板の先の、狭いスペースに押し込まれているため、かなりコンパクトになっています。
艦内に掲げられていた、DAWN BLITS 2013参加艦船のバッジ。
上から、LST-4002しもきた、DDH-181ひゅうが、DDG-177あたご、LCAC3・4号艇、西部方面隊本部、西部方面隊第2中隊、西部方面航空隊、DDG112 MICHAEL MURPHY(アーレイバーク級駆逐艦)、LPD22 SAN DIEGO(サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦)となります。
DAWN BLITSとは国際演習のひとつで、ドーンブリッツ2013は中国を意識した離島奪還訓練でもあり、しもきた・ひゅうがにオスプレイが着艦する訓練も行われています。
アメリカ側で公開されている動画がいくつかありますので、ちょいとご紹介。
国際演習だと、日本と異なり公開されている動画が多いのがいいですね。
ひゅうがへのオスプレイ着艦 → https://www.youtube.com/watch?v=TRTVR3mjJQ8
オスプレイ格納 → https://www.youtube.com/watch?v=U51_IuaI54g
LCAC上陸シーン → https://www.youtube.com/watch?v=92W30MgmXGI
岸壁から車両などを積み卸しするためのサイドランプ。
戦車なども積み卸しできるようにするためか、かなり巨大な扉です。
艦首方向から見たしもきた。
かなりシャープなラインと、全通甲板独特のシルエットで、格好いい艦ですな。
しもきたの先に係留されていた、うわじま型掃海艇MSC-677「まきしま」。
艦の後部をよく見ると、縦に細いラインがいくつも入っているのがわかるでしょうか?
機雷の一部には船体の磁力反応で起爆するものもあるため、木製の艦船となっています。
詳しくはてつのくじら艦で紹介されていましたが、太平洋戦争終結後、アメリカ軍が大量に敷設した機雷を処理する必要があり、残存艦艇をかき集めて掃海作業が行われました。
危険きわまる作業で多数の方が亡くなるなど過酷な作業でしたが、掃海に関する経験はその後発足した海上自衛隊にも引き継がれ、掃海について世界でも有数の能力を誇ります。
湾岸戦争時にペルシャ湾に敷設された機雷を処分するために派遣されたのを覚えている方も多いのではないでしょうか。
なお、技量・経験では世界でもトップレベルであっても、装備に関しては旧式であり、ペルシャ湾の掃海作業において新型の機雷に対して性能の限界と、掃海自体の安全性の低さなど、様々な問題が露呈するに至りました。
その結果、すがしま型掃海艇が建造されることとなりました。
以上で呉基地のしもきた一般公開は終了となります。 時間にして40分程度の見学でしたが、思ったよりもあっという間に時間が過ぎてしまったような…
この後、呉駅方面に戻って大和ミュージアムの見学予定なのですが、なかなか駅方面に戻るバスが無く。
しかも炎天下ということもあり、体力温存のためタクシーで戻ることに決定。
拾ったタクシーの運転手の方から、呉にまつわるエピソードなどをいろいろ聞くことができたので、結果大正解でした。
タクシー車内から撮った、大和を作ったドックの屋根。
「大和のふるさと」と書かれた部分が当時の骨組みをそのまま使った屋根になります。
右側の部分は取り壊して新造されているのですが、いかに巨大かが解るかと思います。
次回は、大和ミュージアム…の予定でしたが、一般公開していた旧呉鎮守府の見学となります。